この記事はバイオリンを演奏して生計を立てている、とあるバイオリニスト(@violin18media)が自身の経験談を元に本番の緊張や不安への対策を伝授します。
と言う方の疑問を解決します。
Contents
本番の緊張・不安対策
まず大前提として緊張は絶対するものです!これはプロでもみんな同じです。
私も緊張に長らく悩まされてきました。本番を迎えるのが嫌すぎて、こんなに頑張ってきた大好きなバイオリンを辞めたくなるほどのものでした。弓が震えすぎて何も音が出せなくなったこともあります。跳躍を心配しすぎて跳躍する音の全てを外したこともあります。緊張で頭が真っ白になり、まさに心ここにあらずと言う状態で、弾き終わった後には何を弾いたか記憶を失くすほど。
集中力をあげるには
私が実践していたのは3つです。
バナナを本番の1時間前に食べる
100%オレンジジュースを飲む
カフェインを控える
バナナを食べてオレンジジュースを飲む
バナナは手軽に頭と体にエネルギー補給ができる食品です。演奏には体力も使いますし、緊張すると頭の中のエネルギーが足りなくなってしまいます。私はバナナを本番の1時間前ごろに食べておくと効果的でした!
オレンジジュースも同じく、集中力アップに期待できます。オレンジジュースを飲むと計算スピードが上がったと言う研究結果も上がっています↓
参考:陰山英男先生によるオレンジジュースの効果に関する研究結果
私はオレンジジュースをバナナと一緒に必ず果汁100%のものを選んで飲んでいます。
カフェインを控える
といって本番前にコーヒーを飲まれる方も多いのでは無いでしょうか?コーヒーの香りはリラックス効果があると報告しているものも数多くあります。
しかし実はコーヒーに含まれるカフェインは脳が「覚醒」します。「覚醒」は脳にとって緊張と同じような感覚に陥ることが多いため、カフェインを摂取することで緊張する方向に向かっていくのです。
カフェインが完全に体から無くなるには9時間必要と言われていますので、本番の9時間前にはコーヒーをはじめとするカフェインを含むものを避けると無難でしょう。
あるプロの奏者はコンクールにコーヒを飲んで挑戦しました。本番が終わり、師事している先生に講評を聞きにいくと「君、本番前にコーヒーとか飲んだんじゃない?普段よりかなりテンポ感が上がっていて焦っている感じに聞こえたよ」と言われたそうです。もちろんこのプロの方のようにコーヒーのカフェインの効果が顕著に現れる方もいらっしゃれば、全く影響が出ないと言う方もいらっしゃいます。むしろ本番前のコーヒーがルーティーン化されているプロ奏者も。人によってそれぞれですので、もしあなたが今コーヒーを飲んで本番に臨んでいて、「上手くいかないな・・・」と思っているのであれば一度カフェインを絶って見るのはありかもしれません!
失敗するのではないかという漠然とした恐怖への対策
といった漠然とした失敗に対する不安への対策を紹介します。
そもそもなぜ緊張はおこるのか?
そもそもなぜ緊張はおこるのでしょうか。簡単に言うと
1、自分の実力に目を向けず完璧な理想を再現しようとする
2、自分に変えられないことを心配している
から緊張がおこるのだと私は考えています。
自分の実力に目を向けず完璧な理想を再現しようとする
今自分の出来る精一杯のこと、目の前にできる音楽に集中することに没頭していれば、先ほど例にあげたように「失敗したらどうしよう?」「音を外したらどうしよう?」と考える暇はありません。
こうした漠然とした不安に取り憑かれやすい方は、現在の目の前のことではなく未来のことを考えがちです。自分の実力に目を向けて自分にできることをやるのが本番です。
自分に変えられないことを心配している
あなたが今不安に思っていることは、果たしてあなた次第で変えられることでしょうか?
例えば、「お客さんが怖い顔をしていたら不安になりそう」だとか、「自分の出番の前の人がとても上手に弾いたら、自分と比べて嫌になりそう」とかそういった考えが思い浮かぶ方は、自分に変えられない事実を心配して不安になっているのです。
実際、自分に変えられないことを心配したってしょうがないのでこの考えは洗い流しましょう!
上記二点について詳しく音楽と関連させて書いてある、「演奏者のためのメンタル・トレーニング 演奏者勝利学」はとても参考になりました。もし興味があればぜひ読んでみてください。
ピンポイントな場所に対する恐怖への対策
といったピンポイントな場所に対する不安への対策を紹介します。
そもそもその恐怖はピンポイントなものなのか?
ピンポイントな恐怖を持ちやすい方は、
といった不安を持っています。
他の場所が普通に弾けるばっかりに「なんでこんなところが上手く弾けないんだろう」とか、「この難しいところだけ上手くできない」といった自己嫌悪にも陥りやすいです。
でも実は他の場所を弾いている時、その時の音楽に集中しておらず、その先の未来の心配をすることで現実の恐怖から逃れているのです。
ちょっとわかりにくいかも知れませんが、簡単に言うと現実の音楽に常に向き合っている状態なのであれば未来の心配もする暇がないと言うことです。「ここは大丈夫なのになぁー」と思っている間も集中できていないのです。
ピンポイントな恐怖に対する対策
一度この恐怖を持ってしまうとなかなか抜け出すには時間がかかります。筆者もppで弓が震えて弾けなくなる病にしばらく悩まされました。ppをみた瞬間体が反応して硬くなってしまうのです。
でも実はこの「その場所に来ると硬くなってしまう」というのも全部自分が「この場所にきたら体を硬くしよう」と決めているのです。自分ではそんなつもりないのにびっくりですよね。「音を外しそうで不安だな」と思う場所では「体を硬くして音を外すようにする」と自分で決めているのです。
ではそれから抜け出すのに良い方法はまずその場所にきても硬くならずリラックスできる方法を見つけることです。
1、今に集中する
2、SAT法を使う
今に集中する
とにかく今に集中する!と心で念じるのです。「震えないように」とか「外さないように」と思うと、そのワードに自分が反応してそれに反した行動を起こしやすくなります。
ですので、「音を外すか」「震えるか」「上手くいくか」「笑われたらどうしよう」ということを心配するのではなく、「客席の端まで音を届けよう!」とか「いい音を鳴らそう」とか「ベートーヴェンのこの気持ちを表現しよう」といった音や音楽を創り上げる思考に変えるべきです。
心配する頭の癖をやめて、どういった音楽をしたいかを考える練習を普段からイメージトレーニングすると良いです。
自分の頭の思考の癖を見つけるにはアスリートの田中ウルヴェ京先生の「人生最強の自分にで会う7日間ノート」がとてもよかったです。
とにかく自分の感情を管理するために書いて、自分の考えの癖を知る良い本でした。すぐ心配する方に考えてしまうなどといった方は自分の感情の癖を知るためにも特にオススメ!
SAT法を使う
SAT法とは、少し音楽とは離れますが宗像恒次さんの提唱する心理学の方法です。私には効果があったのでその内容を少し紹介します。
極限の緊張状態を作る
1、まず目を閉じてあなたはいま極限の緊張状態にある想像をします。先ほどから考えているピンポイントな場所を思い浮かべください。ドキドキ心臓がなり始めてどうしようと不安に襲われてきますよね。この気持ちが本番の時と同様なほど高まるまでしっかりと想像してください。
自分の落ち着く色を知る
2、その状態で下の様々な色を一つ一つじっくりとみていって下さい。
どの色が一番ドキドキを落ち着かせることができましたか?またどの色が自分にとって落ち着く色でしたか?ドキドキ緊張している気持ちが100だとしたら、0になるまでなんどもみて落ち着かせます。この色を見ると0にすることができるんだと思い込ませることがとても大切です。
100を0にするトレーニングをする
3、落ち着く色がわかったらその色を印刷して楽譜の目につくところに貼ったり本番前に気持ちが落ち着くまで見るようにします。そうすると本番前100になってしまった気持ちを自分で0に戻す方法を取得することができます。
SAT法に少し興味が湧いた方はこちらの本も参考にどうぞ
本番に向けてできること
朝起きてから本番で弾くものを弾いてみる
朝起きて何も音出しもしていない、かたまった状態は緊張状態の体ととても似ているそうです。私はプロのオーケストラのオーディション前も毎朝音出しをせずにそのままオーディション曲を通して弾く練習をしていました。自分の思い通りに指が動かないことにびっくりします。緊張状態を創り上げるのにオススメの方法です。
緊張に備えた練習をする
などと考えてはいませんか?これこそ自分の実力に目を向けず理想ばかり追いかけてしまっており、緊張の素です。
成功したらいいなという神頼みではなく、着実な練習を重ねて絶対に大丈夫な自信を自分で作り上げることが、ベストーパフォーマンスを引き出すための練習です。
イメージトレーニングを怠らない
イメージトレーニングは特に大切です。
舞台袖で待機する自分、自分の前に弾いている人の素晴らしい音楽が聞こえてあせる自分、たくさんのお客さん、一斉に自分に集まる視線、考えるだけで手に汗握りますよね。
でも普段の練習からこういったイメージトレーニングを重ねて、人に聴かせているつもりで、聴いて貰っている気持ちで練習することが大切です。
コンクールでもオーディションでも、聴いている人はあなたがどんな音楽を奏でるのかを聴きにきています。少しでも自分の音楽を届ける気持ちでイメージトレーニングしましょう。
本番の緊張・不安対策にオススメの本
上記でも3つのオススメの本を紹介しましたが、他にも私に効果があったものを紹介します。
勝者のゴールデンメンタル あらゆる仕事に効く「心を強くする」技法
スピードスケート金メダリストの髙木菜那選手のメンタルコーチである飯山晄朗さんの著書。スポーツメンタル本でありながら音楽に通づることもたくさん書かれており、大変勉強になった本です。
ハヴァシュ・バイオリン奏法(力みをとり、あがりを克服するアプローチ)
バイオリンに特化したあがり克服本です。楽器の構えかたやボーイングといったアプローチからあがりについて書かれており、バイオリン以外の弦楽器の方にも参考になるところがあると思います。
おわりに
いろいろと偉そうなことを書いてきましたが、私もいまだに緊張と戦う日々です。プロで何回も本番をしていても緊張はやはりします。ですがどのように付き合っていくか、その中でも最大限のパフォーマンスをするにはどういった考え方をするかを常に考え行動していくことが大切だと思います。