この記事はバイオリンを演奏して生計を立てている、とあるバイオリニスト(@violin18media)が自身の経験談を元に作成したものです。
という方の疑問にお答えします。音大をもうすぐ卒業するという方にもとても参考になる記事だと思います。
Contents
フリーの音楽家とオーケストラ団員の違い
フリー音楽家とオーケストラ団員では何が違うのか。ざっくりいうとフリーの音楽家はフリーランスで、オーケストラ団員は会社員という扱いになります。ではフリーランスと会社員では何が変わってくるのでしょうか。
給与形態
まずオーケストラの団員とフリーの音楽家では給与形態が変わってきます。
オーケストラ団員の場合
オーケストラ団員の場合は固定給で月いくらと決まっています。ですから月額でいただく分、月の出勤しなければいけない日数(ノルマ)も決まっています。その代わり、月のノルマ分の日数を出席すればあとは有給を消化して違うお仕事を勝手にしても構わないシステムになっています。ですのでオーケストラに所属している人は大半の人がオーケストラ以外のお仕事や教えるお仕事を別でしています。オーケストラ団員は副業OKの会社員というイメージですね。
フリーの音楽家の場合
フリーの音楽家の場合はオーケストラ団員のように予め用意されたお仕事はありませんから、どこかの団体や大学時代の先輩・後輩・友達・知り合いからお仕事をもらう必要があります。また有給はありませんから休んだ分のお給料はありません。その代わり月のノルマもありませんから、好きな時におやすみして好きな時に働くことが可能です。
各種保険の違い
保険もオーケストラに所属するか、フリーランスで生活するかによって変わってきます。
オーケストラ団員の場合
医療保険は健康保険、年金は厚生年金に入ることができます。また健康保険の特典として出産手当金(出産で働けない期間に1日の3分の2を支給)や傷病手当金(病気やケガで働けない時の手当て)などがあります。また厚生年金の方がフリーランスの国民年金よりも受け取れる年金が高くなります。また会社が代わりに払ってくれるので、自動的に給料から天引きされて簡単です。
フリーの音楽家の場合
医療保険は国民健康保険、年金は国民年金に入ることができます。オーケストラ団員と違って、出産手当金や傷病手当金はなく、受け取れる年金額も半分ほどになってしまいます。また保険料は自分で支払わなければならなく、確定申告を自分でする必要もあり大変です。
社会保険料は経費を引いて所得を下げることにより、保険料も下がります!経費でマイナス所得にすれば、社会保険料0も可能に。正しく確定申告を行いましょう!
お金以外のメリットデメリット
オーケストラ団員の場合
オーケストラが大好きな人にとって、自分の所属するオーケストラがあるというのは何よりの幸せです。また月々で安定して給与がもらえる為、お金のことばかり考えずに音楽に集中することができます。またエキストラでオーケストラにいくと弦楽器の場合前の方で弾くことができませんが、団員になると前の方でコンサートマスターや指揮者の息を感じながらアンサンブルを楽しむことができます。
しかし人間ですので団体に所属することで大変なこともたくさんあります。団員になると、毎日顔合わせて一緒にアンサンブルをするわけなのですが、その中で人間らしいもつれも出てきます。嫌な言い合いを聞いたり巻き込まれてしまうことも・・・。仲の良いオーケストラでも小さいいざこざはあるものです。そういった団体ならではの人間関係のいざこざも多少目をつむれる方には向いていると思います。
フリーの音楽家の場合
フリーの音楽家の場合、仕事をとってくるのが慣れるまでは大変で「今月やばいかも・・・。」とお金で苦労することも多いかもしれませんが、何にも縛られず自由に休みもコントロールできるのはとても大きなメリットです。お金さえためれば「1ヶ月丸々休んで海外旅行!」なんてことも可能ですが、オーケストラ団員は有給が足りなくなりますからそうはいきません。
また好きな曲、好きな仕事だけ選んで働くことも可能です。もちろんあまり選り好みしていると収入が無くなったり、「あの人は仕事選んでるからね」と良くないイメージの噂をされるかもしれませんが、どの仕事をするかはフリーランス演奏家の自由です。
ただ、やはり心配なのは保険類が手厚くないことと、急に働けなくなったりした時に住宅費や食費も危うくなってしまう点がフリーランスのデメリットといえるでしょう。
どちらを選ぶかはあなた次第
結論、フリーランスで安定した仕事がきて給与も安定していれば何も文句はありませんが(笑)そうはいかないのが世の常です。どちらにもメリットデメリットがあります。しかも
と思っても簡単に入ることができないのがオーケストラです。定年退職された方がいらっしゃって初めて席が空いてオーディションが開催されますので、オーディションも楽器によっては数年に1回もしくは数十年に1回。しかもオーディションも楽器によっては1席の枠に100人、200人の応募があるなんてこともしょっちゅうです。
だからといってフリーランスが簡単かといえばそうではありません。フリーランスは人との繋がりを大切にして一回一回の本番で実績をつまなければ次のお仕事がもらえません。
どちらに進んでも音楽で生計を立てるというのは茨の道なのです。
フリーランスを選んだ場合、保険が手薄な分こういったフリーランス向けの無料保険に入っておくのは一つの手だと思います。